東京の木・森のしごと

3-6 森林と産業

  • 水と緑のめぐみと自然体験しぜんたいけん奥多摩町おくたままち

    住宅の背後に山がせまり、数少ない平地に住宅が点在する奥多摩駅周辺の風景
    奥多摩駅周辺

    奥多摩町は、都内の区市町村の中で一番面積(めんせき)が広く、町の94%が森林です。
    多摩川(たまがわ)や日原川(にっぱらがわ)が流れる水のゆたかな町でもあります。
    都民の貴重(きちょう)な水源(すいげん)である、小河内(おごうち)ダムがあることでも有名です。

    東京都の中で奥多摩町の場所を示す地図

    陽に照らされ、山の影を映し出す小河内ダムの水面小河内ダム

    山の斜面を階段状の畑にして、ワサビを栽培する風景奥多摩町のわさび田

    町ではむかしから林業がさかんでした。江戸時代(えどじだい)には、伐(き)り出した木材(もくざい)をいかだに組んで、多摩川から江戸の町まで運んでいました。

    きれいな川の水を生かしてワサビづくりをしたり、山の斜面(しゃめん)では山菜をつくっています。

    また、石灰(せっかい)の採掘(さいくつ)も、むかしから行われてきました。

    奥多摩町は、観光(かんこう)の町としても知られています。町には日本一多い巨樹(きょじゅ)を生かしたセラピーロードがあります。また、温泉施設(おんせんしせつ)や、日本の水源百選(すいげんひゃくせん)にえらばれた、清流を生かした観光施設(かんこうしせつ)も多数あります。

    寄り添うようにそびえる3本の太いスギの幹には、しめ縄が巻かれ、ご神木としての風格をたたえています。奥氷川神社 三本杉

    森の中で巨木を囲み、説明をきく人々の写真奥多摩都民の森 体験のようす

    東京都でもっとも高い山や、御前山(ごぜんやま)、三頭山(みとうさん)があり、ハイキングから本格的(ほんかくてき)な登山まで、いろいろな楽しみ方ができます。
    奥多摩町へは都心から二時間もかかりません。今では、年間170万人以上の観光客(かんこうきゃく)がおとずれています。

    遠くの山並みを見渡せる雲取山には、整備された登山道があり、雪が残る季節にも登山客がやってきます。東京でいちばん高い「雲取山」からの眺望

    栃寄 (とちより)地区にある「奥多摩体験の森」では、植栽(しょくさい)・間伐(かんばつ)などの林業や、山里生活を体験できます。季節(きせつ)にあわせて、森林と積極的(せっきょくてき)にかかわっていくことができます。

    奥多摩体験の森の施設写真奥多摩体験の森

    そして忘れてはならないのが奥多摩のグルメです。奥多摩のきれいな川で育った、ヤマメのさしみや、名産品のワサビをきかせたそば、地元の猟師(りょうし)さんがとったシカ肉の竜田揚げ(たつたあげ)などが食べられます。

    わさびが添えられた、もりそばの写真手打ちそば

  • ゆたかな自然しぜんと木のぬくもり ~檜原村ひのはらむら

    大きな背骨の様な尾根と、彼方に広がる東京のまちの風景
    浅間尾根(檜原村)

    檜原村(ひのはらむら)は、東京都の西に位置しています。南がわを神奈川県(かながわけん)、西がわを山梨県(やまなしけん)と、それぞれとなりあっています。急な山にかこまれ、中央を標高(ひょうこう)1000m近い尾根(おね)が東西に走っています。平地が少なく、集落は村を流れる秋川(あきがわ)ぞいに集中しています。

    村の面積(めんせき)は、93%が森林です。ゆたかな森林や秋川の清流は、多くの動植物を育み、「自然の宝庫(ほうこ)」「東京都の奥座敷(おくざしき)などといわれています。

    東京都の中で檜原村の位置を示す地図

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    岩をはうような滝の流れと、岩を囲む木々の風景
    夢の滝 /ご提供:檜原温泉センター数馬の湯

    村には払沢の滝(ほっさわのたき)をはじめ、50か所以上の滝めぐりや、神戸岩(かのといわ)があります。れきし・文化遺産(ぶんかいさん)を見られる郷土資料館(きょうどしりょうかん)もあり、観光(かんこう)ルートがじゅう実しています。

    また、野鳥観察(かんさつ)・木工教室・丸太切りなど、いろいろな体験(たいけん)ができる「檜原都民の森」も人気があります。村の一番奥にある数馬地区(かずまちく)には、昔ながらの“兜”造り(かぶとづくり)の建物を活かした民宿もあり、多くの観光客(かんこうきゃく)に親しまれています。

    村の産業(さんぎょう)は、かつてはゆたかな森林資源(しげん)を活かした、林業や炭の生産(せいさん)、養蚕(ようさん)が中心でしたが、今では製材業(せいざいぎょう)や採石業(さいせきぎょう・山の石を採取する仕事)、観光業(かんこうぎょう)などがさかんになっています。

    都民の森、と書かれた木製看板が目立つ、檜原都民の森の入り口付近の風景
    檜原都民の森

    大きな茅葺屋根の古民家の写真。屋根のてっぺんの傾斜が急で、武士の兜に似た形をしています。
    兜造りの建物

    そこで、檜原村では、森林の手入れを行う、木の伐採(ばっさい)や出荷にかかる費用に補助金(ほじょきん)を出す、村が作っている建物に木を使うなどの取組(とりくみ)を通して、林業の支援(しえん)を行ったり、村をおとずれた人々が林業体験をできるイベントを開いたりして、村の大切な資源である森林をむだなく使えるようにしています。

    製品(せいひん)として利用できない木材も薪(まき)にして利用しており、都内のレストランなどから多くの注文があります。温泉センター「数馬の湯(かずまのゆ)」でも、村で作られた薪が、燃料(ねんりょう)として使われています。

    雪景色に白い煙をはきだす薪ボイラーと、近くに積まれた、たくさんの薪木の風景
    檜原温泉センター 数馬の湯

    木で出来た鳥や魚、葉っぱなどがワイヤーで繋がれて、風が吹くと揺れるおもちゃの写真
    木のおもちゃ「清流のモビール」

    平成26年に村では、「ウッドスタート宣言(せんげん)」を行いました。「ウッドスタート」とは、子どもをはじめとする全ての人たちが、木のぬくもりを感じながら、楽しくゆたかにくらしを送ることができるようにしていく取組です。

    村では、地元の職人(しょくにん)さんが檜原村の木材で作ったおもちゃを、村の赤ちゃんにプレゼントする取組を始めました。

    このように、地元の木を使えば森林整備(せいび)も進みます。林業がさらに元気になれば、村の中ではたらく人をふやすこともできるかもしれません。

    森を受けつぐ

    山主(林業家) 田中たなか惣一そういち さん