東京の木・森のしごと

1-1 人にやさしい木材

木材が使われた家屋と、細胞の拡大写真。細胞の写真出典「木材の構造」佐伯浩著 日本森林技術協会発行

木の中をのぞいてみよう

木材をけんび鏡で見ると、ストローのように細長い細胞(さいぼう)がならんでいます。この細胞には、空気がたくさん入っています。そのため、木には、人にやさしい色々な効果(こうか)があります。

湿度しつど調整ちょうせいする

木材は、空気の乾いた冬には空気中に水分を出し、空気の湿った梅雨には空気中の水分を吸収しています。

木は、細胞に水分をふくませることができるため、
湿度が高い時には、空気中の水分をすい込み、
乾燥してくると水分を出して、部屋の中をすごしやすくします。

まどの水滴(すいてき)やカビをふせぐため、健康にも良いのです。

熱が伝わりにくい

木は、細胞の中に空気が入っているため、熱が伝わりにくい特徴(とくちょう)があります。そのため、木のおはしやおわんを持っていても、手は熱くなりません。

また、木の家にいると、夏はすずしく、冬はあたたかく感じるのも、熱い空気や、冷たい空気が伝わりにくい、木の働きのおかげです。

熱い味噌汁を入れた木のお椀を手で持っても、手は熱くなりません。熱を伝えにくい「木のおわん」

木の床の上を駆け回る子供たちの足元では、空気を含んだ木の細胞が衝撃をやわらげています横から見た木の細胞 

衝撃しょうげきをやわらげる

空気をふくんだ木の細胞は、クッションのように衝撃をやわらげる働きをするため、体になじみやすく、木材の上を歩くと、コンクリートよりもやわらかく感じます。

音を心地よくする

木の細胞は、音の振動(しんどう)をほどよくすい込み、人が不快(ふかい)に感じる音のひびきをやわらげてくれます。音を美しくひびかせる働きをするため、楽器や劇場(げきじょう)のかべにも、よく使われています。

音を心地よく響かせるために木を使って作られたバイオリン

法隆寺の五重塔の写真法隆寺(奈良県)

長持ちする

木は人にとって昔から身近な建築(けんちく)材料です。世界で最も古い木造(もくぞう)の建物は、いまから約1300年前に建てられた日本の法隆寺(ほうりゅうじ)です。

木材はしっかり手入れをすれば、とても長く使うことができます。

人をリラックスさせる

3人の子供達が、無垢の木で作られたおもちゃで遊んでいます

木には種類によって、いろいろな香り(かおり)があり、
人をリラックスさせます。
また、細胞の中に多くの空気をふくむため、
体温がうばわれにくく、ぬくもりを感じます。

菌(きん)もふせいでくれるので、安心して使えます。

ムダなく使える

木は、ほとんどの部分を捨てずに使うことができます。木材を作ると出る木の皮や端材(はざい)は、
くだいてチップにすれば、紙やダンボール、ストーブの燃料(ねんりょう)などのもとになります。
木の家をこわした後、まだ使える柱は、別の家に利用することもできます。

丸太は角が丸いため、四角い柱や板を作るために、機械で樹皮に近い部分を落として平らな面にします。この時切り落とした端の部分は、細かく砕くと、チップとして利用できます