東京の木・森のしごと

4-2 森林を元気にするとりくみ

次世代へ受けつぐ森林

斜面に植えられた苗木に日光が当たる風景

東京都では、人工林の木を伐採(ばっさい)・搬出(はんしゅつ)し、木材として利用するとりくみを進めています。
伐採した後の森林に、花粉の少ないスギなどの苗木(なえぎ)を植え、約30年間は、下刈(したがり)や間伐(かんばつ)、枝打(えだうち)をする費用をしはらいます。 こうすることで、ふたたび、木材として利用できる木を育てることができます。森林は、木を伐(き)って利用し、伐った後に新しい木を育てていけば、使い続けることができる“資源(しげん)”なのです。

また、木を育てるためには、たくさんの作業が必要です。林業の仕事がふえれば、新しく林業の仕事を始めるわかい人がふえて、技術(ぎじゅつ)の継承(けいしょう)にもつながります。 そこで東京都では、伐採・搬出や森林作業道などを作るための、知識(ちしき)や技術を教えています。

人とニホンジカとの共ぞん、ゆたかな森林を維持いじするために

東京都では、平成17年度から増加(ぞうか)したニホンジカを捕獲(ほかく)する対さくを行い、ニホンジカの頭数管理を行っています。このため、その数はへりつつあります。

しかし、ニホンジカが一か所に集まった場合、植物が食べつくされたりして、土砂(どしゃ)くずれの危険性(きけんせい)があるので、一か所にたくさん群(む)れないようにすることも必要です。

そのため、東京都ではどの地域(ちいき)にどれくらいニホンジカがいるのかを調べて、多くいるところで捕獲などの対さくを集中して行っています。

苗木の横に佇む小鹿の写真小鹿(ニホンジカ)

シカを防ぐ柵の内側に、沢山の苗木が育てられている風景シカが入れないようにする柵

さらに、新しい苗木を植えたところには柵(さく)などを設置(せっち)し、その場所にニホンジカが入れないようにする対さくも行っています。また、今までニホンジカがいなかった地域にひろがってきているかどうか、調査(ちょうさ)・研究を行っています。

ニホンジカは日本最古の歌集『万葉集』などいろいろな和歌に詠(よ)まれているほど、古くから人が親しみを感じていた動物です。
ニホンジカが生きる環境(かんきょう)を維持しながら、森林を守ることはかんたんではありませんが、人とニホンジカが共ぞんできるゆたかな森林を目指しとりくみを行っています。

東京都農林総合そうごう研究センターのとりくみ


東京都農林総合研究センターでは、花粉の少ないスギやヒノキ(少花粉スギ、少花粉ヒノキ)の実用化や、シカによる森林への被害(ひがい)の軽減(けいげん)など、東京都の事業をささえる試験研究を行っています。


少花粉スギの研究

東京都農林総合研究センターは、これまで種をとる林を山の中につくっていましたが、少花粉スギでは平地に林をつくり、種をとる木を小型(大人の手がとどく高さ)にして、こうりつの良い種子生産にとりくんでいます。少花粉ヒノキの研究も進み、平成28年冬には、種子の生産が始まる予定です。

山の斜面にある種子採集用のスギ林と、平地にある種子採取用の少花粉スギ林と、少花粉ヒノキの林で行っている研究の様子の写真


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未来へつづく森づくりの輪

近年、森林や木に関するイベント、ボランティアなどへの関心が高まっています。

最近では、企業(きぎょう)などが森づくりに参加し、森の手入れを手伝ったり、森づくりに必要な費用を代わりにしはらう、といったことが行われています。

急斜面で植栽する人々の写真「企業の森」社員などによる植栽

東京マラソンの森、と書かれた看板と山の斜面の風景チャリティーの寄付金を活用した「東京マラソンの森」(八王子市)

また、ボランティアで山の木を伐ったり、
ざっ草を刈(か)ったりする人達もいます。

東京の森林を知る・森づくりを体験する機会は、みなさんの身近なところにもあります。

国や都、区市町村役場や、企業、ボランティア団体(だんたい)など、いろいろな団体が、森林の様子を知ってもらうために、イベントや森づくり体験などを行っています。

森林は大切な資源であるとともに、地球の環境を守るためにも、とても重要です。そのためいろいろな人達に、森づくりに協力してもらうことが大切です。

多摩産材のおもちゃで遊ぶ子供たちなど、多くの人でにぎわうイベント風景多摩産材の利用を促進するためのPRイベント

二俣尾ふたまたお武蔵野むさしの市民の森事業


森林に立てられた説明板の前で、職員の話を聞く参加者たちの写真二俣尾・武蔵野市民の森(青梅市二俣尾)

武蔵野市では、森林を活かすための積極的なとりくみを行っています。平成13年度から、東京都農林水産振興財団(とうきょうとのうりんすいさんしんこうざいだん)、山林所有者と協力して、森林の一部を保全(ほぜん)し、活用しています。

山林所有者は、森林を提供(ていきょう)します。農林水産振興財団は、森林を整備(せいび)します。武蔵野市は、森林を整備するための費用をしはらいます。また、小中学生に向けた秘密基地(ひみつきち)づくりなどを体験する“土曜学校”や、市民に向けた、草木ぞめなどの“森林のめぐみを使った講座(こうざ)”などを行って、市民の方が森林を知り、ふれあえるようにしています。



森を体験する 

山主(林業家) 福田ふくだ珠子たまこ さん