東京の木・森のしごと

5-3 未就学児童対象の木育事例

森の子保育園

野のゆり保育園の写真

園の紹介・理念

平成24年に開園した立川市の森の子保育園は「人を愛し、自然を愛し、自分を愛する子ども」を保育理念に掲げ、住宅街の中にある保育園ですが畑や緑に囲まれた静かな環境にあります。

「本物を大切にする」

森の子保育園の保育活動の中心にあるのは、「本物を子どもに体験させる」ということです。

土に触わり野菜を育てる、花を活けてランチルームに飾る、0歳から本物の陶器で食事をするなど子ども達が本物に触れることは、人間形成・思想形成の根幹となる体験であると考えています。

森の子保育園では、子ども達の豊かな「原体験」を大切に、卒園後もそのしっかりとした根っこで大きく伸びていくことを確信しながら、保育活動を行なっています。

園の紹介・理念の写真

木育のきっかけ

出発点は“森”の子保育園。
その名にたがわぬ“森の庭”を作ること。

森の子保育園では保育の3本柱として
「モンテッソーリ教育」
「自然体験活動」
「食育活動」
を取り入れています。
その中で子ども達の育つより良い環境を考えていたときに「木育」と出会いました。

木育のきっかけの写真

木育の目的(木育事業を利用する目的)

木育事業を利用し、園庭に木製の大型遊具を取り入れ、拡大した園庭部分には子どもたちがより多くの自然に触れることができるよう、たくさんの植物が植えられています。畑で栽培活動を行ったり園庭の果樹を使って染色活動を行ったりと、保育の中の様々な場面で、自然に触れる体験を取り入れています。

園庭でさまざまな植物に囲まれて生活する中で木の良さを感じられるようにしています。また、五感すべてで感じ成長する大切な乳児期は、木製の家具を多く使用した環境にしています。

木育活動を続けることによって、子どもたちが自然の中で豊かな経験を重ねながら自然への理解を深め、情緒を育み、いつも自然を感じることができるようにしています。

木育の目的の写真

木育活動の内容

森の子保育園の木育活動を紹介します。

1年を3つのステップに分け、活動を行っています。

木育活動の内容の写真1

木育活動の内容の写真2

木育活動の内容の写真3

【ステップ1】「触れる・感じる」~木と出会う~

主な活動

  • 園庭マップ作り(園庭にある身近な自然を知る)
  • マリーゴールド(植える、育てる、写生)
  • スズカケの木の観察(年間)
  • 柏の葉を収穫(柏餅に巻いて食べる)
  • 森林学習(幼児の調べ学習)
  • 桃の収穫(桃の皮、枝を染色に使う、試食)
  • 親子遠足(国営昭和記念公園で自然体験)

【ステップ1】「触れる・感じる」~木と出会う~の写真

【ステップ2】「創る・楽しむ・学ぶ」~木の良さに気付く~

主な活動

  • ブルーベリー収穫(ジャム作り)
  • ぶどうの収穫(ぶどうジュース作り)
  • アートkids(木工制作)
  • 木の実拾い(制作)
  • 草木染(卒園アルバムのカバー布を染める)
  • 職員研修(園庭に植えた木のネームプレート作り)
  • 芋掘り
    (廃材を利用し焼き芋パーティー、いもづるのリース作り)
  • 年長体験学習(ノコギリ体験)

【ステップ2】「創る・楽しむ・学ぶ」~木の良さに気付く~の写真

【ステップ3】「知る・理解する・行動する」~木への理解を深める~

主な活動

  • アート展で発表(1年間の活動の成果を保護者にも伝える)
  • 森の小道作り
  • 丸太橋作り
  • 内装手入れ(木の家具)
  • カレーライス作り(園で収穫したじゃがいもを使用)

【ステップ3】「知る・理解する・行動する」~木への理解を深める~の写真1

【ステップ3】「知る・理解する・行動する」~木への理解を深める~の写真2

木工制作(木のプレート作り・のこぎり体験)

子どもたちがノコギリで丸太を切る体験をしています。
職員は園庭にある多くの木々や植物の名札として木のプレート作りをしました。

木工制作(木のプレート作り・のこぎり体験)の写真1

木工制作(木のプレート作り・のこぎり体験)の写真2

卒園アルバムのカバー制作の写真1

卒園アルバムのカバー制作

年長児が一年掛かりで、制作しています。

春にマリーゴールドの種を植えるところから始まり、花を咲かせ、写生した後に収穫、保存・乾燥させ、冬には煮出して草木染を行います。 染め方は糸を使って絞る絞り染め、割り箸などで締めて染める板締めなどの技法を用いて様々な表現をしています。マリーゴールドの他にも保育園でできたザクロや桃など、果物の皮も使用します。 桜の枝から抽出した染液でピンク色に染めることも思案中。

その年の収穫によって、色が違うところに面白みがあります。

世界にひとつのアルバム作り

その他の取組の紹介

その他の取組の紹介の写真1

まず職員が、森林の役割や大切さを学び、子どもたちに伝えていきたいと思っています。

昔は身近にあった自然ですが、今の世代には積極的に取り入れなくては、なかなか触れることのできないものになっています。

そこで、森林の大切さを伝えるには、まず職員が積極的に学ぶ体制をつくることが必要と考え、「木育インストラクターの取得」「職員研修」を行っています。

その他の取組の紹介の写真2

森の子保育園では、できるだけ行事は行わず日々の生活を大切にしています。

木育についても同様に、日々の保育の中に自然に取り入れています。

木製の家具を多用し、園庭で様々な植物に囲まれて生活する中で、木の良さを感じられるようにしています。

また、計画的に木育を保育に組み込むことで、木への興味関心を持ち、知識へと繋げています。

その他の取組の紹介の写真3

保護者にも、保育園入園の際から、園内の木質環境や園庭の自然の多さを伝えています。

自然体験保育を柱の一つに掲げ、保育の中で様々な活動を行っていますが、園庭の植物の維持管理には保護者にも協力していただいています。

より多くの保護者にも、森林の大切さを伝えるため、親子遠足で国営昭和記念公園に出かけ、自然を体験しています。

森の子保育園は畑や国営公園など、徒歩で行ける範囲にさまざまな自然体験ができる場所が多く在ります。

近隣の方にご協力いただいたきながらさまざまな栽培活動に取り組み、積極的に地域の方と連携した活動も行なっています。

園内だけではできない活動を取り入れることで、より自然に親しみ子どもたちの自然への興味関心を広げています。

森の子保育園情報の写真

森の子保育園

http://www.morinoko.ed.jp/

※内容および所属役職等は取材当時
 (2019年1月)のものです