東京の木・森のしごと

5-3 未就学児童対象の木育事例

野のゆり保育園

野のゆり保育園の写真

園の紹介・理念

平成29年に開園した目黒区の野のゆり保育園は、定員46名の小規模園です。
家庭的な環境で、少人数だから実現しやすい、「じっくりと一人一人を丁寧に」をモットーにしています。

すぐ近くに法人の本部である双葉の園保育園があり、そちらは85年以上の歴史がある大型園ですが、もう少し家庭的な保育園を作りたいという思いから、さつまいも畑や職員宿舎があった所有地に、野のゆり保育園ができました。

「自然の木材を多く使った保育環境づくり」に取り組んでいて、子どもたちが日常的に木のぬくもりを感じられるよう、質の高い木の玩具や家具を保育室にそろえています。
園舎も木造平屋建てで木の良さを生かしており、保護者の皆さんや子どもたちから「木の香りがして心地良い」と評判です。


園の紹介・理念の写真

近隣には駒場公園、駒場野公園などがあり、桜を始めとした多くの木々の中、親子でレクレーション、アートワークショップなどを楽しんでいます。親子で楽しく遊びながら森林浴の気持ちよさを身近に感じています。

また、自然に親しみ大切にすることを目標としているため、園庭で野菜づくりをしたり、カブトムシを育てたりしています。

木育のきっかけ

100mほどの距離にある双葉の園保育園の園庭に、同じように木育事業として多摩産材の大型遊具を作った経緯があり、子どもたちが丸太によじ登ったり、滑り降りたり、秘密基地に見立てたりして楽しく遊んでいる様子を見て、木のぬくもりや自然を感じながら遊んでほしいとの思いから、取り組みを始めました。

また、園庭の大型木製遊具と同時に、室内で使う木製玩具を購入しています。
木製玩具は長く使い続けられ、木の柔らかい刺激を感じ、色が強すぎたり使い捨てにならないもので遊んでもらいたいという思いで、それ以前から親しんでいましたが、もっと幅を広げたいということで、事業者と打合せをし、大型の遊具だけでなく細かい室内遊具も木育事業の一環として作りました。


木育のきっかけの写真

開園してから1年後に大型小型の木製遊具ができ、その後さらに1年が経過した現在、
「外遊びに関しては、上に登ったり中に入ったり、運動面でももちろんですが、そこに寝そべって遊んだり、本当に活発に遊ぶようになりましたね。それまでも保育者や園児もなんとか工夫しながらやってきましたが、伸び伸びと子どもたち自身で活発に遊ぶという姿が見られますので、非常に有難かったなと思います。室内遊びでも、プラスチック製の玩具に比べて、不思議なことに木製のほうが丁寧に扱っているように見受けられます。重さの違いもあるのかもしれませんが、それだけではない何か、子ども心に感じるものがあるような気がしています。」

木育の目的(木育事業を利用する目的)

自然の木材に触れることを園の理念としており、木の香りや、ツルツルしているとか、ザラザラしているとか、だんだん年数が経ってくるとささくれ立ってきたり…、そういう自然のものを感じながら育っていってほしいという思いがあります。

また、ほとんどの職員が双葉の園保育園で木育事業を経験して保育を行ってきており、同じように取り組んでいきたいという考えもありました。

自然なものの美しさを知る、身近に感じることを、大事にしています。
その中で子どもたちが“気付く”ということ。例えば、松ぼっくりが落ちていたとして、ただ落ちているものではなく、日頃から行っていることにより、それを拾ったら何かを作れるのではと感じてもらえたり、持ち帰って遊びに使えるということを気付くということが木育に繋がっていると考えます。

木育の目的の写真

木育活動の内容

野のゆり保育園の木育活動を紹介します。

子どもたちは日常的に自然の木材に触れる他、正方形、長方形、三角形にカットされたヒノキに色をつけ積木として遊んだり、他にも木の枝、木の実を使ったアートの時間も設けています。

木育活動の内容の写真

親子つみ木遊び

保育参観の期間を設け、カプラや積木を使って親子で遊ぶ機会を作っています。

アートワークショップと作品展の写真

アートワークショップと作品展

アートの講師が作ってきた三角や四角の積み木に色を塗って遊びます。

また毎週1回アートの時間を設けています。年に1回、作品展も開催され保護者に披露しています。

双葉の園保育園への遊具遊びの写真

双葉の園保育園への遊具遊び

自園よりも大きな大型遊具(多摩産材使用)があります。

ボルダリングで高い所までよじ登ったり、登り棒を利用しすべり降りたりするなどダイナミックに遊んでいます。

木の枝、木工アートショップ

お散歩に行って、木の枝や実、松ぼっくりなどを拾ってきて作品に使用したりして、自然に親しむことを日常的に行っています。

木の枝、木工アートショップの写真1

木の枝、木工アートショップの写真2

親子で多摩産材園庭遊具遊び

保育参加として、園庭に作った多摩産材の大型木製遊具で親子で遊ぶ機会を作っています。

駒場公園等親子レクレーション

駒場公園などに親子で出かけて、木に囲まれた緑の中で、昆虫や草花、樹木などを観察したり、楽しく運動やレクレーションなどを楽しんでいます。

木育インストラクター講座受講

木育を体系的に学習するためにNPO法人芸術と遊び創造協会が主催する「木育インストラクター講座」を受講し、木育を学ぶ人材育成に努めています。

木のクリスマスオーナメント作りの写真

木のクリスマスオーナメント作り

木を輪切りにしたものに、ポスターカラーとペンで絵を描きます。

「葉っぱをラミネートしてしおりやタペストリーを作って、子どもたちが感謝の気持ちとして保護者へプレゼントしたこともありましたが、もらった保護者の方にも喜んでいただけて、それを見た子どもたちも喜んでいて…、「良い経験をさせていただいていて有難いです。」というご意見をいただいた時は非常に嬉しかったですね。」

購入した室内で使う木製玩具

多摩産材のプレイテーブル、キッチン台、パーテーション、壁掛けの玩具(キーハウス)、ロックボックス、ヒノキの汽車などの玩具を購入しました。
多くの家具、玩具などの材質が無垢の木製品で、手入れしながら長く親しめるようにと考えています。

プレイテーブルの写真

プレイテーブル

机の特徴を生かし、下に落ちやすい細かい玩具や丸い玩具(ひも通しなど)で遊ぶときに使っています。

集中して遊びやすい環境を作っています。

キッチン台の写真

キッチン台

幼児クラスに置いています。

ままごと遊びがさらに展開できるように棚をフラットにして器やフライパンなどを置くスペースを広くしました。

子ども達が立って料理が作れるように高さを工夫しました。

パーテーションの写真

パーテーション

幼児クラスのコーナー作りに使用し、体を動かして遊びたい子どもと静かに机上遊びをしたい子ども、それぞれの遊びを尊重しています。

壁掛け玩具の写真

壁掛け玩具

立って遊びはじめる1歳半頃の子どもたちが、目の高さで遊べます。

手先が器用になり扉や引き出しの開閉に興味を持ちはじめるので、色々な種類のかぎをつけています。

クラスの友達の写真を中に貼り、開けたら顔が見られるようにしています。

ロックボックスの写真

ロックボックス

かぎの数を増やし開け方が少し難しい種類を取り付けています。

2~3歳頃の子どもが自分の好きな場所でじっくり遊べるように持ち運べるようにしました。

ヒノキの汽車の写真

ヒノキの汽車

雨の日や延長保育の子どもたちがホールで楽しく遊んでいます。

連結をはずしてそれぞれに分かれて乗ることもできます。

その他の取組の紹介

開園時からおもちゃ美術館で木工の玩具を購入するなど、木育についても保育士を中心に学習しています。

また、「自然の木材を使った保育環境づくり」は、他の木育活動を含め継続して取り組んでいます。

その他の取組の紹介の写真1

その他の取組の紹介の写真2

野のゆり保育園情報の写真

野のゆり保育園

https://www.nonoyuri-hoikuen.com/

※内容および所属役職等は取材当時
 (2019年1月)のものです