東京の木・森のしごと

5-4 木育授業の事例

世田谷区立等々力小学校

研究発表会(授業)の内容

【2時間目】つかむ(続き)

2時間目は、学級全体で共通して追究するために問題意識を醸成させて、学習問題を設定します。
大切なのは、教師が何でも解説してしまうのではなく、資料と発問、子どもとのやり取りでひたすら問題意識を掻き立て、調べたい意識を高めることです。

「森林には、どんな役割があるのでしょう?」

山は水を蓄える働きがあり、土砂災害を防ぐ役割があることや、憩いの場としての役割など、「日本の森林には年間約70兆円の資産価値がある」という事実をつかんだ上で、次の映像を見せます。

そこには大規模な山火事の映像が流れています。
そして数日後に同じ場所で、雨が降った後川のように道路に水が流れ、土砂や車が流されている映像へと続きます。


大規模な山火事の映像イメージの写真

それを見た子どもからは、「これは日本なの?外国なの??」「なんで火事の後に、あのようになってしまうの?」といった疑問が出てきます。

そこで調べてみると、これは外国のことで、山火事で木が全部無くなってしまい、そこに雨が降り、土が崩れて街が土砂災害にあったとつかみます。

「うわー、すごい大変。でも外国で起きたことなのか…。」
最初は緊張感が走りますが、外国のことだと分かると一度他人事になります。

「では日本は大丈夫なの?」

そう発問すると、子どもたちは「大丈夫でしょ!森林がたくさんあるんだから」という意見と「いや、森林があるからこそ土砂災害が起こりそうだよ」と予想の対立で盛り上がります。

調べてみると驚くことに、日本の全域で約1,500件も土砂災害は発生しているのです。

「森林には土砂災害を防ぐ役割があって、日本にはそんな森林がたくさんあるのに、なぜ土砂災害がそんなにおこるの?」という切実な疑問がまた生まれます。


平成29年の各地の土砂災害発生件数の写真出典:国土交通省「平成29年の各地の土砂災害発生件数」

そこで、林業家の方の話を聞いた資料などを見ながら、とても大切で長く親しんできた森林が、林業を行う人の数がどんどん減っていて手が行き届かず、災害につながり、今危機的な状況にあるということを知ります。また、林業家だけではもうどうにもならないという悲痛な声も知ります。

そこで、ここまで学んできたことで疑問に思うことを出し合いました。「この先どうなってしまうのだろう。」「森林はどうやったら守っていけるのだろう。」「誰か守っていないの?」という様々な疑問をまとめ、学習問題を設定します。

学習問題 『大切な森林を私たちはどう森林を守っていけばいいのだろう』

この時点では、もう問題が他人事から自分事に変化しているのです。

「テストのための問題でもなければ、覚えるための問題でもない。現実社会にかかわる切実な問題意識をつかんで、自分たちで追究していき、それが自分事になっていく。今、教師が力をいれているところはまさにここです。」


学習問題の写真

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